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研究室紹介(岩永研究室)

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岩永研究室Iwanaga Laboratory

分野:流体工学(Fluid Engineering)


研究室の紹介をします。まずは自慢話から。

  岩永研究室の自慢の第1点は研究室内に旋盤(鉄を円形に削る工作機械)、フライス盤(鉄を平たく削る工作機械)、ボール盤(鉄に穴をあける工作機械)と今はやりの3Dプリンターが揃っていて、夜中でも実験装置を作ることができることです。

 第2点は研究で使用するコンピュータプログラムをVisual Basic や Visual C# を用いて自分たちで作っていることです。

 第3点は研究室に集まってくださる学生さん達のやる気です。ここ2,3年、毎年日本機械学会主催の講演会で卒業研究生(4年生)が自分たちの卒業研究テーマを壇上発表しています。私も講演会会場の岡山大学や富山大学に同行し、楽しい時を過ごさせてもらいました。

 私は昼間大学に居る間は、学生さんたちのお手伝いに徹することにしています。毎日「何か研究でお手伝いすることはありませんか?何か買ってきて欲しい部品はありませんか?何か作ってほしい部品やプログラムはありませんか?」ときいています。 要望が出ると、一緒に買い物に行ったり、一緒に部品を工作したり、一緒にプログラムを作ったり、なるべく早く学生さんの要望をかなえるように努力しています。

次は研究のお話です。

 では学生さんはどのようなテーマを研究しているのでしょうか?

・クラブ活動として鳥人間コンテストに参加している学生さんが二人、「自分たちが設計した翼型の性能を簡単に知りたい」という希望を持って研究室に来てくれました。一緒に色々試行錯誤して、電子機器を一切使用しないで、揚力、抗力を簡単に計測する方法を確立しました。この方法は大学から特許出願して頂くことになりました。

・「台風のときよく傘が壊れるのは何故だろう」という疑問を持って研究室に来て下さった学生さんがいます。その学生さんは傘が壊れる過程を解明し、壊れにくいと予想する傘の模型を3Dプリンターを駆使して作成し、研究しています。

・大分昔の話ですが一人の学生さんが、「自分は医療機器の会社に将来勤めたいので、卒業研究として、血液の流れを研究したい」と言って研究室に来てくれました。赤血球の代わりにプラスチックの球形粒子を使って研究を進めていくうちに、主管に沢山粒子が流れていても、分岐管にはほとんど粒子が入ってこない現象があることがわかってきました。この現象を10年以上の歳月をかけて研究し、粒子の頭の高さが低ければ低いほど、分岐管に粒子が入り易いことがわかりました。この現象は生命の進化に大きく関わっていることがわかってきました。進化の過程で哺乳類がうまれたとき、赤血球の形が大きく変わりました。それまでは赤血球は中に核を保持した楕円体でしたが、哺乳類からは核を捨てて、穴の空いていない浮き袋のようにペッタンコでフニャフニャ自由に形を変えることができるように変化しました。頭の高さを低くすることで赤血球は分岐管(毛細血管)に入り易くなりました。現在哺乳類は地球上で繁栄しています。これは毛細血管を駆使して緻密な頭脳を形成できるようになったことが大きな理由であると考えています。

でもそれだけでは、工学として役立ちません。この現象を利用して、粒子を取り除く回転フィルターを考案し、特許を取得することができました。今、学生さんは、この回転フィルターをより使い易くする工夫をして下さっています。

・地球は回転しています。この回転によって台風の回転方向が決まってくることはよく知られています。研究室に人が乗って回転できるような回転台を用意し、その上に水平軸まわりに回転する円筒をおき、円筒内部の流体の動きを調べました。内部の渦が回転台の回転によって傾いたり、崩壊したりするのです。この研究を担当していた学生さんが「お菓子の製作会社に勤めたい」と言うので、この現象をチョコレートの撹拌に用いることができないかと考え、研究しました。絵の具の原液を完全に撹拌できることがわかり、この撹拌方法を大学から特許出願して頂きました。今、学生さんは、粉と粉の撹拌もこの方法でできないか研究して下さっています。

・樹木は100mもの高さになるものもあるのに、地下から最上部の葉に導管を通して水を運び上げています。人間も同じようなことができるでしょうか?細管の上部を真空にしても、せいぜい10mしか水を持ち上げることはできません。この課題も10年以上の歳月をかけて学生さんと色々試行錯誤した結果、何とかエネルギー効率よく水を運び上げることができるようになりました。でもそれだけでは役立ちそうにありません。もっと工夫して役立つ装置にしようと、学生さんと一緒に研究を続けています。

・私は昔ヘビースモーカーでした。ところが煙草をやめた途端、他人が吸う煙草の臭いがイヤでイヤでたまらなくなりました。勝手なものですね。喫茶店やレストランの禁煙席に座っていても、かすかに煙草の臭いがするのです。同じ部屋に煙草を吸う人と吸わない人が居ても、煙草を吸わない人の元に煙草の煙が絶対に流れてこない換気システムを作りたいと思いました。これも10年以上の歳月をかけてやっとその方法が見つかり、特許になりました。今、学生さんは、実物大の部屋でこの方法が有効であることを証明しようと研究して下さっています。

 

 私は大学に赴任するとき、「自分が研究したいテーマを自由に研究したい」との希望をもっていました。でもこのように研究室の研究の歴史を見てくると、学生さんの要望に応えようと色々試行錯誤することで、研究が広がってきたことがわかります。私が学生さんを育てたのではなく、学生さんが私を研究者として育てて下さったように思います。授業料を払うのは、私の方かもしれません。以上が研究のお話です。

 次は大学周りの自然環境のお話です。

 神奈川工科大学がある厚木は広大な関東平野の西の端に位置し、山々に接しています。また市内に大きな川が流れており、自然が豊かです。私はメタボ対策として毎日のように河畔や200mほどの高さの裏山の周りをサイクリングしています。100匹以上の猿軍団、キジの一家、カワセミ、フクロウ、ホタルに会うこともしばしばです。添付の動画は、苦労して撮影したキジが鳴く瞬間です。これを卒業研究生に自慢げに見せたところ、「実家の庭にはよくキジが遊びに来ていますよ」との反応で、ガッカリでした。


キジ鳴き4.mov