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金属細線の共振振動を利用して流体の密度を測定する (高石研究室)
金属細線の共振振動を利用して流体の密度を測定する (高石研究室)
熱エネルギの一部を力学的仕事に変換する熱機関や、電気エネルギを消費して低温から高温に熱を運び低温を実現する冷凍空調装置などには、状態変化して熱を授受する作動流体が使われています。したがって、熱が関係するこれらのシステムを最適に設計・製作し、効率よく運転・制御するためには、その中で働いている作動流体の熱物性(熱的性質)を正確に解明しておくことが必要です。
一般に、流体の熱物性は、密度、比熱、蒸気圧、エンタルピー、エントロピーなどの熱力学性質と呼ばれるものと、粘性率、熱伝導率、拡散率などのような輸送性質と呼ばれるものに大別されます。さて、流体の密度は、純物質では温度と圧力の関数です。重いのか軽いのか、疎なのか密なのか、密度はそれ自身が重要な性質であるばかりでなく、エンタルピーやエントロピーなどの直接測定できない他の熱力学性質を求めるために必要となる状態式を作成する基礎データでもあります。
密度を測る方法には様々なものがありますが、ここでは、当研究室で研究中の「金属細線の共振振動を利用して流体の密度を測定する」振動細線密度計について紹介します。
図1に、振動細線密度計の基本構造を示しました。その主要部は、試料流体中でおもりを吊るした金属細線から構成されています。金属細線は永久磁石によって作られる磁場の中に置かれています。金属細線に交流電圧を加え、その振動数を変化させると、金属細線は共振振動を起こします。試料流体の密度と金属細線の共振振動数は、以下のように関係しています。
(試料流体の密度が大きくなる)⇒ (おもりに作用する試料流体の浮力が増える)⇒ (おもりを吊るした金属細線の張力が小さくなる)⇒ (金属細線の固有振動数すなわち共振振動数が小さくなる)。
これは、ちょうど、ギターで、弦の張りを弱めると低い音が出るようになるということと同じことです。このように、試料流体の密度の変化を金属細線の共振振動数の変化として検出するにことによって、試料流体の密度が測定できるようになります。
図2には、当研究室で試作した振動細線密度計による共振曲線および共振振動数の測定例を示しました。密度の異なる3種類の試料液体について、大気圧下、室温約20℃の条件で測定されたものです。図2および表2に示したように、試料液体の密度が683.5 kg/m3から787. Kg/m3まで大きくなると、金属細線の共振振動のピーク値を与える共振振動数は855.6 Hzから833.1 Hzまで小さくなることがわかりました。図3は、振動細線密度計の圧力容器と測定装置の外観です。当研究室では、おもりを吊るした金属細線の共振振動を利用して高圧下の流体の密度を±0.1%程度の精度で測定できる振動細線密度計の実現を目指して研究を進めています。 (機械工学科 高石吉登)
図1 振動細線密計の構造
図2 共振曲線および共振振動数の測定例(大気圧、約20℃)
表1 共振振動数の測定例(大気圧)
試料液体 |
温度 |
共振振動数 |
密度 |
℃ |
Hz |
kg/m3 |
|
n-Heptane |
20.1 |
855.6 |
683.5 |
n-Octane |
20.4 |
849.7 |
701.5 |
Acetone |
22.4 |
833.1 |
787.7 |
図3 振動細線密計の圧力容器(写真左下)と計測装置
以上